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2018/06/06
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空気に色を塗る男。そして鼻孔の奥の時間の匂ひ

谷重岳路の本(電子書籍等)の販売PRを行うサイトです。
著者はこう考えています。
−−−人間は記憶を紡ぐ生き物。夢見心地の時間をおもいのままに再現できれば、人生はなんと豊かになることか!!
仕事を通して惹き起こされる様々な思い・感情。それらを曼荼羅絵にしてひとつひとつ書き留めていきたい。色鮮やかな、多様な出来事。−−−
ここでは、その谷重岳路が立ち会ったシーンを思い浮かべて、あたたかい気持ちになってくださいね。(拝)

効果・効能は?テイストは?

それではちょっと試し読み。
著者の日記風エッセーを少し引用してみましょう。
2021年1月10日
 よく見るテレビ『日曜美術館』をみた。へぇー、雪舟が天橋立の水墨画を手掛けたのは、82歳の時なんだって、これは驚き。
 雪舟の水墨画は、これまであまり好きではなかったけれど、李さんの説明を聞いていると、なるほどと思った。
ひとつには、実際にはない風景をいくつかの構図を大胆に組み入れて、絵に躍動感、勢いを創っていることだった。コラージュである。単調にひとつの風景だけを描いているわけではないのである。
 もう一つ、『破墨山水図』。強い墨の色と、幽かな墨の色。そして絵の境界を越えて、外に飛び出ようとする空白。いや空白ではない、単に色がない存在。色として意識できるものと、色として意識できないもののコラージュ。それがひとつの絵の中におさまっているのである。ひしひしとした緊張感がある。
 雪舟が生まれたのは、岡山県は総社市。そうそう小生の小説(文庫本)が総社市さんのご厚意で図書館に寄贈されている。欝々とした青春の真っ只中の人たちの目に触れる機会があれば、望外の喜びである。


セーヌ河 釣り人のいる風景

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○月○×日
<小さな傘と壊れかけた保育園>

朝から雨。外に出る。横断歩道の手前で透明の小さな傘を差しながら、信号が変わるのを待つ。
雨が間断なく降っている。透明の小さな傘で充分。大きな傘で雨を妨げたくない。小さな傘があれば充分。景色は変わりなく、雨。その中で、僕は透明の、小さな傘を差して、立ちつくしている。

こんな雨の風景を、どこかの窓の外の風景としてみていた。窓ガラスには雨つぶが降りかかり、やがて耐え切れなくなったように、スゥーと下に流れていく。どこの窓だったのだろうか。
それは壊れかけた保育園の中に忍び込んだときのことだった。廃園になり、立ち入り禁止の黄色いロープが張ってある中を、遊び仲間の近所の友人たちと中に忍び込み、さんざんの悪さをした。壁をぶち破り、自分たちの思い思いの部屋をつくった。秘密の宝物の隠し場所もつくった。宝物というのは色とりどりのきれいなビー玉が入った缶である。
そこはまるで僕たちの『だれも知らない小さな国』だった。学校からも家からも社会からも隔絶された、僕たちの国だった。
その日は雨。それでもワクワクドキドキしながら、いつものように黄色いロープをくぐって、壊れかけた保育園に僕は侵入した。空気の入れ替えのない澱んだカビ臭い匂いがだれもいない空間を支配していた。だれか来ているだろうと思ったが、雨の日のためか、友人の姿はみえなかった。壊れかけた保育園の中で、物音ひとつない世界が拡がっていた。僕たちがつくった自慢の“ハンモック”に寝そべりながら、ガラス窓の外の雨に見惚れていた。
              ※             ※
後日談がある。やがてこのワルさをしているのが学校に報告されて、中学の担当にこっぴどく叱られた。ただ、先生はまじめな僕が共犯者であったことに、ひどく驚いていた。ほんとは僕が主犯者であったのに。

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○月○×日
山種美術館に『速水御舟』展を見に行く。


空気を表現する。

京都・比叡山近くの山村の風景。冷え冷えとして、空気感を出す『青』を使う。

蒔きつぶし
椿の繚乱たる花が、金の余白に映える。

『粧蛾舞戯(しょうがぶぎ)』
アンジェイ・ワイダの地下水道から見える光・明日へ
舞いながら明るいところをめざして飛ぶ蛾は、どこをめざし、どこに行き着くのだろうか。

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