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2018年11月19日 [鱗燦堂]

松本竣介『立てる像』

 日曜美術館で『松本竣介』をみる。二年ほど前になろうか、鎌倉の美術館が閉館になるという最後の企画展で『古賀春江』展を見に行ったことがある。そのときに『松本竣介』の絵も展示されていた。目的の『古賀春江』の絵よりも、妙に印象に残った。覚悟のようなものが、息づいていた。そんなこともあって、ぜひ見たいと思っていたテレビ番組だった。
 『立てる像』は気がつかなかったが、右目と左目が斜視になっていた。左目は強い意志的な瞳をしているが、右目は妙に暗い、悲しい表情を浮かべている。人生は『歓喜と悲哀』を抱えてすすむものとの解説そのまま、まさしく右目と左目は相違する感情を映している。そして、その感情を乖離させるように、斜視にしたのであろうか。

 「黒い線を力強く描いていると、一日生きているという満足感があった」と言う。たしかに曖昧模糊とした線はない。意志的に線を引っ張っているのだ。
 モンタージュを多用しているらしい。建物を正面からみた構図と、俯瞰した構図を一枚の絵の中に同時に取り入れているのだ。人物の描写も、いくつかの別々の写真を模写して、人物が脈絡なく強引に存在しているのだ。

<二つの技法>
(1)カルトンという技法で、線画による構図をカーボン紙に描き、それを転写して全体の構成を描く。(ストーリー)
(2)グラッシという手法で、色を重ね、さらにうすい色調を重ね、色をぬぐい取り、さらに色を削り取って、また色を重ねていく。そういう方法で奥行きのある色味、表現を獲得している。(ディティール)

 松本竣介描く風景画が見たくなった。絵の奥のほうに描かれている建物をつぶさに見たくなった。そこにどんな記憶を閉じ込めているのだろう。青い空気感の奥で、ひっそりと描かれている建物を、つぶさに見たくなった。
(※下記の写真は看板を写したもので、絵画ではありません。念のため)
松本竣介『立てる像』


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